今日の内容は長く、そして重い。

アルバイト募集をかけてずいぶんと日が経ち、その間2人を雇ったが1人は2日目に主人に怒られ、次の日から来ず、もう一人は夕方5時出勤なのに夜9時ごろやってきて、「明日からでもいいですか?」とほざいた。

その2人が辞めてから、やっと一昨日、何とかいけそう?と思える18歳の学生さんがやってきた。

夜の売り子さんバイトは私も主人もスタンバイしているので、2人で十分なのだが、バイト募集の紙をまだ外さずにいた。


そして昨夜、小柄で、いかにもまだ子供っぽいおかっぱ頭の女の子がリュックを背負って、片手に大きなバッグを持ってお店に入ってきた。

「バイトさせて欲しいんです。」

その子は硬い表情のまま言った。



彼女が訳ありなのは誰が見ても分かる。

とりあえず、2階へ上がって話を聞くことにした。


彼女は皮肉な笑い方をし、真直ぐに相手のことを見ない。

中卒で、今16歳だと言う。

学歴が中卒だと言う子は、チェンライにはまだまだたくさんいる。
だから不思議ではない。

ただ、この大きな荷物が気になった。



主人は回りくどい言い方をせず、確信をついた。

「家を出てきたの?」

うなずく彼女。



まずいなぁ~、、、と心の中で私は思った。

彼女はそれ以上語ろうとしない。



主人はまだまだ質問する。

「ご両親と一緒に住んでたの?」

彼女は首を振る。


「じゃあ、今まで誰とどこで住んでたの?」

まだ子供っぽい彼女に、私も思わず黙っていられなくなった。




何でも彼女の本当のお母さんは健在だが、お父さんは既に亡くなったと言う。

新しいお父さんと3人でナコンパトム県で過ごしていたが、理由があり、一昨年その家を出たらしい。

そしてその後、チェンコーン(チェンライ県の端にあるラオスに接した町)で、引き取って育ててくれると申し出たおじさんとおばさん(他人)とその子供2人と1年間過ごしたという。

そして今日の午後、チェンライ市内に到着した、、、と言った。


身寄りもなければ、行くあてもない。


私たちのお店に来るまでに、2軒のお店に働かせて欲しいとお願いしたが、断れた、とも言った。


主人は更に確信をついた。

「なぜ、本当のお母さんと一緒に住まないの? どんな理由で飛び出してきたの?」


彼女は卑屈に笑って、横を向く。

歯をくいしばって、泣きそうになっているのをこらえているようにも見えた。

「家出してきた理由、答えられないの?」

「いえません。」

彼女は首を振りながらそう言った。


お姉さんがいるらしいが既に結婚し、バンコクで家政婦さんとして働いていると言った。

もちろん私はどうしてお姉さんのところに行かないの?とも聞いた。

バンコクならチェンライなんかとは比べ物にならないぐらい働き口があるからだ。

だが、彼女の答えは単純明解だった。
「バンコクに行くバス代がないんです。」



ふと心配になった。

「今いくら持ってるの? ご飯は食べたの??」



彼女はご飯にはルークチン揚げを食べ、手元には100バーツとちょっと残っていると言う。



ここまで全てをしゃべっている彼女なのに、家出をしてきた理由を語ろうとしない彼女に、私は不満だった。

私たちの元で働きたいと言うのだから、それは譲れない質問だとも言った。


どんな理由で家出してきたのか知らないまま、どういう人間なのか分からない人を、私たちの借りているスタッフ用の家に住まわせ、一緒に仕事をすることは想像できなかったからだ。



私は力説した。

しばらくして彼女は2回目のおじさんとおばさんの家をどうして出てきたのか、小さく短くしゃべった。

ここにその理由は書かない。
あまりにも気分が重くなるから。



それでも彼女は本当のお母さんの元を離れた理由は、言おうとしなかった。

私と主人はあきらめた。



そして考えた。


どうするべきか。


私にはまだまだ聞きたいことが山ほどあった。

「もし、ここで私たちがまだバイトは要りません、って断ったらどうするの? どこへ行くの? もう夜の9時だけど。」


彼女は黙ったままだった。


彼女の卑屈な笑いや真直ぐに人を見ない態度に、彼女が育ってきた環境を想像させるものがチラリと見え隠れしていて、また聞かずにいられなくなった。


「将来の夢はあるの? 例えば、看護婦さんになりたいとか、喫茶店を持ってみたい、、とか。」


この質問に彼女は時間をかけることなく答えた。

「お店でモノを売る人になりたいんです。」




私も主人もうつむいたまま、考えた。


悩んだ。 困った。


そして、主人が先に口を開いた。

「自分を勤勉だと思う? 自分は素直だと思う? ここで仕事がしたいと思う?」

彼女は全てに「ハイ」と答えた。



「歯ブラシやシャンプーはあるの?」

彼女は首を振る。



「み~、この子に200バーツ渡して。 名前はなんて言うの? このお金で、シャンプーとか生活に必要なものを買ってきて、ご飯をお腹いっぱい食べてから戻っておいで。明日から仕事だよ。」


悩んだけど、本当は分かっていた。

2階に連れて上がって話を聞いた時点から。

きっと主人はこの子を見捨てない。


彼女が買い物に行っている間に主人は私に言った。

「僕たちが今出来ることはこれが精一杯。 あとは彼女次第。 もし働き者でガッツがあれば、僕たちはラッキーだし、怠け者だったら1日でさよならだ。」




歯ブラシやシャンプーを買って、苦笑いをしながら帰ってきた彼女に、私は昔誰かに聞いた言葉を言った。

「チャンスの神様はね、前髪しかなくって、後ろはハゲてるんだよ。 だから、そのチャンスが来た時、すぐにしっかり捕まえないと、あ~~~と思ってるうちに、すごいスピードで走って行って、捕まえようと思っても、ツルンと滑って捕まえられないんだからね。」


彼女は笑って聞き流したが、私はとても真剣だった。


これから彼女はどうするのだろう。
これから私たちはどうなるのだろう。

この決断が正しかったのか、それとも間違っていたのか、それは今はまだ分からない。




↑↓良かったら応援クリックお願いします↓↑
banner_02.gif


スポンサーサイト

カウンター・プレゼントのお知らせ♪

またまた穴掘りにーちゃん

comment iconコメント ( -7 )

読んでいくほどに
泣けてきました・・
どんな身の上であろうとも
ご主人の質問のように
素直で勤勉な子でありますようにと
願わずにいられません。

ここで真剣に仕事をして
いろいろ学ばせてもらえば
おのずと明るい性格になるはず・・
人の目をみて話せる子に
なって欲しい!!

幸運(チャンス)の女神が前髪つかむ話は
私も読んだ事があって信じているの。
自分の直感を信じて
前向きに進もうといつも思ってます・・

名前: mogyo [Edit] 2007-02-12 21:41

いろいろ考えさせられる話でしたv-406
今後の彼女、み~さん達の所で頑張っていって欲しいですよね!
彼女はみ~さんの店に面接に行った事もチャンスの第一歩!
しっかり掴んで自分のものにして欲しいです。

ご主人素敵ですね!この決断、結果がどうであれ神様がみ~さんとご主人に彼女を会わせてくれたのだと思います。

それと、自分は恵まれすぎてるという事も改めて思いました。のほほんと生活しているとつい忘れがちな大事な事をみ~さんは思い出させてくれます。

名前: ぽんころりん [Edit] 2007-02-13 06:29

チャンスの神様、とってもいい話ですね。
私も心にとめておきます。
彼女が、み~。さんご夫妻の優しさ、大きさに気付いてくれてることを願います。
そしてそのすばらし心をを見に付けてくれることを。
彼女に笑顔が戻りますように。

名前: ジョニー [Edit] 2007-02-13 15:08

ご主人、素敵!
こんな風に、決断できるって、なかなかないと思うな。
もちろん、『彼女を見捨てない』と信じたみ~さんも!
素晴らしい夫婦ですね!

他人を信じられなかったり、自分を守りたかったり…
そんな気持ちが強いと、こういう大事な時に良い決断ができないよね。

サラッと書いてくれた、この文面からは想像もつかないような深刻な状況があったとは思いますが
この子が人の優しさに気付いて、まっすぐになってくれるといいな♪と思います。
まだ、16歳だもんね~。幸せになるチャンスをつかんで欲しいね。
そして、み~さんのお店にとっても…この子が救いの女神になってくれるといいね^^

名前: mai [Edit] 2007-02-13 15:40

★mogyoさんへ★

とっても切羽詰っているはずなのに、そういう素振りを見せないところや、なかなか素直になれないところがあり、こちらとしても対応が難しいのが現実です。

まだ仕事を始めたばかりだし、16歳だということも忘れないようにしているのですが、、、。

とても無口なので、本当に心から笑える明るい子になれるといいのですが、、、今のところ、すべて希望的推測ができるだけです。




★ぽんころりんさんへ★

やさしいお言葉ありがとうございます。

こちらに住んでから、日本にいたころでは想像できない現実に、ごく普通に直面することが多々あり、気持ちの整理ができないこともしばしばです。

この2日間で、彼女と私たちの間で、既にいろいろなことが起こりました。

ぽんころりんさんがおっしゃるように、私たちのお店に来たこともチャンスの第一歩だと考え、素直に受け取ってくれているといいのですが。

きっと私たちがこうして欲しい、と望むことは簡単でも、実際に彼女の身になると難しいんだろうなと思います。




★ジョニーさんへ★

素直に笑える環境にあるっていうことは、私たちにとってごく普通のことなのですが、彼女のような環境にある子にとっては、それはある意味、挑戦のような感覚、もしくはとても覚悟のいることなのかな?とも今回思いました。

ハゲの神様の話は、ずいぶん前に聞いたのですが、なるほど~!と思ったので、私もずっと気をつけながら生活するよう努力しています!

チャンスは待つものではなく、自分で掴むもの!ですからね♪




★maiさんへ★

主人=素敵と言う言葉がなんだか面白く感じるのですが(苦笑)、実は主人も子供の頃から両親と暮らせず、貧しい家庭に育ったからこそ、こういう決断をしたのかもしれません。

私も実際にあの時「自分を守りたい」「面倒なことは回避したい」という気持ちが強かったのも事実です。

そう、まだ16歳なんですよね、、、私が16歳の時なんて何も考えずにのほほんと生活してました。

maiさんがおっしゃるように、この子が人のやさしさに気づき、私たちのお店にとっても女神となることを祈るばかりです。

名前: み~。 [Edit] 2007-02-13 21:29

ども。
前に言ったけど、がんばっていれば
いつかはついて来る人が現れる。って話。
今回の彼女は今までの人とは違うと思うよe-2
僕が感じたのは、彼女は虐待を受けていたんじゃないか
と思いました。
と、言うのは僕も似たような状況に昔なりました。
そのとき、小学生だったけど家を出たいって思ったの。
出れなかったけどね・・・・・・。

でも、その経験があったから今無理をしながらでも
がんばって来れたんだe-2

彼女はこれからがんばってくれると思います。
というより、ご主人とみ~さんに対して恩ができたから
それを返そうとしてくれるでしょう。

彼女にも伝えてねe-2
どんな失敗をしても笑顔を忘れずにe-2
それと、遠く日本から応援ではなく見守ってるからねe-2って。

長くなったけど、み~さんも良い傾向が出てきてるんじゃないのぉ~e-3

名前: もるパパ [Edit] 2007-02-13 22:50

★もるパパさんへ★

こんばんは♪

私もこの子に関しては、今まで以上に気合が入ってしまいます。

どうか、ここできちんと人と接すること、働いてお金を得ること、そして人を信じること、そんなことを学んでくれれば、そして私たちと一緒に戦ってくれれば、、、と願わずにはいられません。

こんな風にいろんな方に応援してもらって、彼女は今、少しずつ幸せを掴みかけているんじゃないかな~と言う気すらしてきました。
ありがとうございます!

名前: み~。 [Edit] 2007-02-14 19:50

コメントの投稿






trackback iconトラックバック ( -0 )

Trackback URL:

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。